やさしく解説 Q&A 宅建基礎と応用
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基礎編 (宅建初心者向け)
権利及び権利の変動
Q1 制限行為能力者の制度は、従来の無能力者制度とは、どこが違うのですか。
Q2 法定代理人は、どういう場合に復代理人を選任できるのですか。その復代理人が本人を害する行為をした場合、法定代理人はどういう責任を負うのですのか。
Q3 代理人として取引の場に現れた者が、実は代理人ではなかった(無権代理人であった)という場合、相手方は後日、誰に何を言うことができるのでしょうか。
Q4 代理人と名乗った者が実は代理権を持っていなかったという事実を知っていながら契約をした相手方は、後日に、その契約を無権代理行為であることを理由に取り消すことができるのでしょうか。
Q5 「本人が死亡して無権代理人が本人の地位を相続した場合」と「無権代理人が死亡し、本人が無権代理人の地位を相続した場合」とでは、結論はどのように違うのでしょうか。そのような違いが生じるのはなぜですか。
Q6 中間省略登記とはどういう登記なのですか、中間省略登記が有効とされるために全員の合意が必要なのはなぜですか。
Q7 「登記には公信力がない」とは、どういう意味ですか。登記簿を信じて不動産を買っても所有権を取得できないならば、不動産を買おうとする者はどうすればよいのですか。
Q8 抵当権によって担保される被担保債権の範囲について、「利息その他の定期金」は満期となった最後の2年分に限られるのはなぜですか。
Q9 同じ不動産に、抵当権などの担保物権がいくつも設定されている場合、それらの担保物権は、どのような順番で弁済を受けることができるのですか。
Q10 抵当権で弁済を保証された債権(被担保債権)が時効で消滅した場合と、抵当権が時効で消滅した場合とでは、どう違うのですか。
Q11 契約を申し込んだ者が、その申込が相手方に到達する前に死亡した場合でも、申込の効力は生じるのですか。相手方が承諾すれば、契約は成立するのですか。
Q12 買った家が、引渡を受ける前に、隣家からの延焼で燃えてしまった場合、建物の引渡を受けることができなくなったにもかかわらず、買主は代金を支払わなければならないのですか。
Q13 連帯債務者の一人が債権者に債務の全額を支払った場合に、他の連帯債務者に求償できるのはなぜですか。
Q14 受働債権に同時履行の抗弁権がついていても相殺ができるのに、自働債権に同時履行の抗弁権がついていたら相殺ができないのは、なぜですか。
Q15 法定相続分と遺留分とは、どう違うのですか。
Q1 制限行為能力者の制度は、従来の無能力者制度とは、どこが違うのですか。
A
  1. 制度全体について
    「無能力者制度」が「制限行為能力者制度」に変わりました。未成年者に変わりはありませんが、「禁治産者」は「成年被後見人」に、「準禁治産者」は「被保佐人」に変わり、「被補助人」が新たに加わりました。未成年者に変わりはありません。
  2. 未成年者について
     未成年者については、特に変わりはありません。
  3. 成年被後見人について
     禁治産者の行為は、常に取り消すことができました。しかし、成年被後見人は、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、単独で行うことができますから、取り消すことができません。また、成年被後見人の所有する居住用不動産を、保護者である成年後見人が代理して処分するには、家庭裁判所の許可が必要です。
  4. 被保佐人について
     準禁治産者の保護者である保佐人には、取消権も代理権もありませんでした。しかし、被保佐人の保護者である保佐人には取消権が認められ、家庭裁判所の許可により代理権が与えられる場合もあります。また、被保佐人の所有する居住用不動産を、保護者である保佐人が代理して処分するには、家庭裁判所の許可が必要です。
  5. 被補助人について
     補助開始の審判が本人以外の者の申立てによりなされるためには、被補助人とされる者の同意が必要です。被補助人の保護者である補助人には、同意権、取消権、追認権が認められるほか、家庭裁判所の許可により代理権が与えられる場合もあります。
  6. 任意後見制度について
     制限能力者には保護者が付されるという法定後見制度の他、任意後見制度が認められることになりました。任意後見制度とは、本人が後見事務の全部又は一部について任意後見人に代理権を付与する「任意後見契約」を事前に締結することにより、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督の下で任意後見人による保護を受けることができるという制度です。
  7. 成年後見登記制度について
     従来は、未成年者を除く無能力者に関しては、戸籍にその旨が記載されていました。しかし、成年後見制度では、戸籍への記載に代わって、後見・保佐・補助に関しては登記を行うという、「成年後見登記制度」が創設されました。
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Q2 法定代理人は、どういう場合に復代理人を選任できるのですか。その復代理人が本人を害する行為をした場合、法定代理人はどういう責任を負うのですのか。
A

これについては、本人が自ら他人を代理人に選んだという場合(任意代理の場合)と、たとえば未成年者の代わりにその親(親権者)が法律行為を行うという場合(法定代理の場合)とを比較して考える必要があります。

任意代理の場合、誰を代理人とするかは、本人と代理人となる者との信頼関係の下、合意で決まります。また、任意代理人に与えられる権限は、たとえば「自分の代わりに、あそこの土地を買ってください」というように、個別の法律行為に関するものであるのが通常です。すなわち、任意代理人は本人の信頼の下で、個別の行為を代理して行う者です。そのため、任意代理人が復代理人を選任することができるのは、本人がそれを承諾した場合か、または代理人に本人の承諾を得る時間的余裕がない等のやむを得ない事情があった場合です。このように任意代理人は、限られた場合に復代理人を選任することができるのみですから、その責任を負う場合もまた限られています。つまり、任意代理人は、復代理人として不適格な者を選任した(たとえば普通ならば選ばないような無能な人間を復代理人に選んでしまった)場合、または復代理人として選任した者の監督を怠ったために、本人に損害を生じさせてしまった(たとえば復代理人が本人から預かった金銭を紛失して本人に損害を生じさせてしまった)という場合にのみ、本人に対して損害賠償責任を負えばよいのです。

これに対し、法定代理の場合、誰を代理人にするかは法律で定められていることであり、この点に本人の意思も代理人となる者の意思も関わっていません。また、法定代理人に与えられる権限は、本人の財産管理に関する包括的なものであることが通常です。すなわち、法定代理人は、本人の信頼とは関係なく、包括的な行為を代理して行う者です。
そこで、法定代理人は、その保護する相手のその責任をもって、いつでも復代理人を選任することができます。そのかわり、復代理人の選任や監督に過失があろうとなかろうと、復代理人が本人に損害を与えてしまった場合には、法定代理人は原則として、本人に対し損害賠償責任を負わなければなりません。
ただし、法定代理の場合、例外として、この損害賠償責任を負わなくても良い場合があります。たとえば法定代理人が病気で入院してしまったとか、やむを得ない場合です。

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Q3 代理人として取引の場に現れた者が、実は代理人ではなかった(無権代理人であった)という場合、相手方は後日、誰に何を言うことができるのでしょうか。
A

代理権を持たない者と契約(取引行為)をしてしまった相手方は、次の4つの手段を採ることができます
(1)本人に対する催告(本人に対し、「代理人と名乗った者を真実の代理人であったと認めて契約を有効にしてください」とお願いすること)
(2)取消(相手方から代理人との契約を解消すること)
(3)無権代理人の責任追及(代理人を名乗った者に、「あなた自身が契約の当事者として義務を履行してください、そうでなければ損害を賠償して下さい」と要求すること)
(4)表現代理の主張(代理人を名乗った者と本人との間に特別な関係がある場合、「本人に契約の当事者としての責任を認めて、契約を有効にするべきだ」と主張すること)

もっとも、制限行為能力者が無権代理行為を行った場合には、その制限行為能力者は、契約の当事者としての義務を強制されること(履行責任)もなければ、相手方に損害賠償を強制されること(損賠償責任)もありません(民法第117条)。制限行為能力者には、そのような責任を負担する能力がないと考えられているからです。そこで、代理権を持たない制限能力者と契約をしてしまった相手方は、上記の(3)以外の手段を採ることになります。
宅建試験においては、無権代理の場合、本人は追認又は追認拒絶をなすことができ、相手方は上記の4つをなすことができるという点が出題されます。中でも、制限行為能力者は履行又は損害賠償という無権代理人の責任を負わないという点は、特に重要です。

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Q4 代理人と名乗った者が実は代理権を持っていなかったという事実を知っていながら契約をした相手方は、後日に、その契約を無権代理行為であることを理由に取り消すことができるのでしょうか。
A

できません。
代理権を有しない者(無権代理人)が代理人として行った契約(無権代理行為)は、無権代理であることを知らなかった相手方(善意の相手方)に限り、本人の追認がなされる前であれば、取り消すことができます。
誰が契約の当事者としての責任を負うのか(契約の行為が誰に帰属するのか)は、相手方にとって重大な関心事です。それなのに無権代理人によって締結された契約を取り消すことができないというのでは、相手方は当初予期していなかった損害を被ってしまいます。たとえば相手方は、十分な支払能力がある者と契約をしたつもりだったのに、支払能力のない者が契約の当事者とされたのでは、満足に支払いを受けることができません。
逆に本人の追認があれば、その契約は無権代理行為ではなかったことになり、契約は本人と相手方に帰属します。相手方は当初から本人を契約の当事者と考えて取引を進めていたのですから、その本人を契約の当事者と認める以上、誰にも損害は生じません。
また、本人の追認後にも相手方の取消を認めてしまいますと、今度は本人に損害が生じるという事態が生じてしまいますから、相手方の取消は本人が追認する前になされなければなりません。
これに対し、初めから無権代理であることを知りながら無権代理人と契約を締結した相手方(悪意の相手方)は、無権代理行為を取り消すかどうかという裁量を与えるに値しない者です。
そこで、このような悪意の相手方は、本人に対して追認するかどうかを催告することができるのみなのです(無権代理人の責任を追及することもできません)。
本人が追認すれば、本人と相手方に契約の効果は帰属します。
しかし、本人が追認を拒絶するか、又は催告に対して本人のはっきりとした返事がない(確答がない)場合、無権代理行為は有効な代理行為とはならず、悪意の相手方との関係では無効な行為となります。

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Q5 「本人が死亡して無権代理人が本人の地位を相続した場合」と「無権代理人が死亡し、本人が無権代理人の地位を相続した場合」とでは、結論はどのように違うのでしょうか。そのような違いが生じるのはなぜですか。
A

無権代理人が死亡して本人が相続した場合、本人は無権代理行為の追認を拒絶する(自分が契約の当事者となることを拒む)ことができます。逆に、本人が死亡して無権代理人が相続した場合、無権代理行為の追認を拒絶することは認められず、無権代理行為は有効となります。

このような違いが生じるのは、次のような理由からです。
無権代理人には無権代理人の地位(無権代理人としての責任を負うという地位)があり、本人には本人の地位(無権代理行為を追認するか、追認を拒絶するかの自由があるという地位)があります。相続が生じれば、死んだ人間の持っていた債権も債務も、残された人間にそのまま引き継がれますから、無権代理人または本人の一方が死亡し、他方が相続人となった場合、同じ人間に二人の人間の地位が、同時に存在する(併存する)ことになります。
無権代理人が死亡して本人が相続した場合、(親族であるとはいえ)他人に勝手な行為をされた本人が、相続という自分の意思とは関係のない偶然の事情によって、自分が行為をしたのと同様な結果を当然に強制されるべき理由はありません。そこで、この場合の相続人である本人は、本人の地位に基づいて無権代理行為の追認を拒絶することができます。
ただし、この場合には本人には無権代理人としての地位も帰属していますから、無権代理人としての責任も負わなければなりません。逆に本人は、無権代理行為を追認することもできますが、この場合には結果的に無権代理行為ではなかったことになりますから、本人は無権代理人としての責任は負いません。
逆に、本人が死亡して無権代理人が相続した場合、代理権もないのに「私は代理人です」といって契約をしておきながら、後日になって本人が死亡したら、「残念でした。本人の相続人である私は、本人の地位に基づいて追認を拒否します」などと、不誠実なことをいうのを認めるわけにはいきません。このように、自ら無権代理行為をしておきながら、相続という自分の意思とは関係のない偶然の事情によって、本人の地位で無権代理行為の追認を拒絶することは、人は取引を行う上では一般社会通念上の良識に従って誠実に行動しなければならないという民法の原則(「信義則」といいます)に反します。そこで、この場合の無権代理行為は有効とされるのです。

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Q6 中間省略登記とはどういう登記なのですか、中間省略登記が有効とされるために全員の合意が必要なのはなぜですか
A

中間省略登記とは、不動産が甲から乙、乙から丙へと譲渡されたのにその登記を、中間者乙を省略して、甲から丙へと登記を移転する場合をいいます。
登記簿上の記載が、当該不動産の所有者甲から乙、乙から丙へと移転したという、物権変動の課程を忠実に反映していることが望ましいことはいうまでもありません。しかし、不動産の登記をするには登録免許税が必要です。そこで、上記の例では、関係者全員の合意により、甲から乙、乙から丙という2回の移転登記をすべきところを、甲から丙という1回の移転登記で済ませようという節税目的から、中間省略登記がなされることがあるのです。

では、なぜ全員の合意が必要なのでしょうか。
登記をするには、登記義務者(売主)と登記権利者(買主)が共同で申請しなければなりません(共同申請主義)。甲から丙への中間省略登記をする場合でも、甲と丙が共同でしなければなりませんので、中間省略登記について甲と丙の合意がなければならないのは当然です。

問題となるのは、中間者乙の合意がなぜ必要なのか、です。不動産売買においては、買主は当該不動産の所有権を確保するために登記の移転を望みますが、売主としてはまだ代金を受け取っていないのに登記を買主に移転したのでは、代金の支払いと登記の移転とは同時履行の関係にあるとして、代金をもらい損ねる危険を回避することができません。そこで、中間省略登記の場合には、中間者を含めた全員の合意が必要とされるのです。

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Q7 「登記には公信力がない」とは、どういう意味ですか。登記簿を信じて不動産を買っても所有権を取得できないならば、不動産を買おうとする者はどうすればよいのですか。
A

不動産の登記には対抗力があるだけで、公信力はありません。公信力とは、たとえ真実の権利関係とは異なる公示が存在したとしても、その公示を信頼して取引した者には、公示通りの権利状態があったのと同様の保護を与える力のことです。ですから、「登記には公信力がない」とは、不動産に関する権利関係を登記してある登記簿を見ただけで不動産を買ったとしても、その所有権を取得できるとは限らないことをいいます。
これは、次の理由からです。すなわち、(1)土地や建物という不動産は、動産(不動産以外のもの)と異なり、一般に財産的価値が大きいので、取引関係に入った者の保護(「取引安全の保護」とか「動的安全の保護」といいます)よりも、真実の所有者等の権利者の保護(「静的安全の保護」といいます)を重視すべきですし、(2)我が国の登記制度では、登記官には申請された登記の内容が真実の権利関係を反映しているかどうかを審査する権限がありませんから、もしも「登記に公信力がある」とするならば、あまりにも真実の権利者の保護に欠けることになってしまうからです。<  そこで不動産を買おうとする者は、取引に際して登記簿を調べるだけでなく、その不動産の存在する現場に行って、自分の目で見たり周囲の住民に聞いて確かめる等をする必要があります。

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Q8 抵当権によって担保される被担保債権の範囲について、「利息その他の定期金」は満期となった最後の2年分に限られるのはなぜですか。
A

同じ不動産に抵当権を設定した者が複数いる場合などに、先に抵当権の登記をした者の利益と後から抵当権の登記を設定した者等の利益とを調整するためです。

そもそも貸金債権に利息のように一定期間が経過するごとに大きく増えていくものがある場合、これに一定の枠を設けなければ、後から抵当権に登記を設定する者(二番抵当権者や三番抵当権者などの後順位抵当権者)や担保を取らずにお金を貸そうとする者(一般債権者)は、それだけ自分の債権を回収できなくなってしまいます。そうなりますと、金を借りようとする者に既に一番目の抵当権がついていたならば、次に金を貸そうとする者は、自分が将来いくら回収できるのか予想を立てにくいため、「それならば金を貸さない」ということになってしまいます。
そこで、一番抵当権者のような先順位抵当権者の利益と、二番抵当権者以降のような後順位抵当権者(及び一般債権者)の利益を調整するため、「利息その他の定期金の範囲は、満期となった最後の2年分」に制限されたのです。
 ただし、ここで注意しなければならないことが2点あります。
 まず第1点ですが、上で説明したことは、後順位抵当権者(及び一般債権者)の保護にその目的がありますから、後順位抵当権者等が存在しないため、その利益保護を考える必要がない場合には、利息その他の定期金を満期となった最後の2年分に制限する必要はない、つまり元本の他、利息その他の定期金も全額、抵当目的不動産の価値によって担保されるということです。そして第2点ですが、たとえ後順位抵当権者等が存在し、その利益保護を考えなければならないとしても、利息その他の定期金のうち、満期となった最後の2年分を超える部分については、抵当目的不動産の価値によって担保されないというだけで、無担保の債権として存続するということです。債務者は、元本及び利息その他の定期金の全額を債権者に返済しなければ、債務者としての責任を逃れることができず、抵当権を消滅することもできないのです。

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Q9 同じ不動産に、抵当権などの担保物権がいくつも設定されている場合、それらの担保物権は、どのような順番で弁済を受けることができるのですか。
A

抵当目的不動産については、他の担保権者や一般債権者が弁済を主張することが少なくありません。特に、抵当権者と他の担保物権者との優先順位(弁済を受けることができる順番)が問題となります。

  1. 抵当権者相互の優先関係について
    抵当権者相互の優先関係は、登記を設定した順番(早い順)で決まります。
    つまり、登記を先にした抵当権者(先順位抵当権者)は、後から登記をした抵当権者(後順位抵当権者)よりも優先して弁済を受けることができます。後順位抵当権者は、抵当権がつけられた不動産の価値(抵当目的不動産の担保価値)のうち、先順位抵当権者が弁済を受けた額を除いた、残りの部分についてのみ弁済を受けることができます。
  2. 抵当権と先取特権との優先関係について
     先取特権には、一般先取特権(債務者の全ての財産に対して先取特権が成立するというものです。「特定」の財産に対して先取特権が成立するものではないため、「一般」先取特権といいます。先取特権一般という意味ではありません)、動産先取特権、不動産先取特権がありますが、このうち抵当権と優先順位が問題となるのは一般先取特権と不動産先取特権です
     しかし、これらの先取特権については、細かいことは宅建試験に出題されませんので、先取特権の細かい内容を覚える必要はありません。「抵当権と先取特権とでは、その優先順位は、登記をした不動産保存ないし工事の先取特権は、常に抵当権に優先する」という結論のみを覚えてください。
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Q10 抵当権で弁済を保証された債権(被担保債権)が時効で消滅した場合と、抵当権が時効で消滅した場合とでは、どう違うのですか。
A

被担保債権が時効によって消滅すると、抵当権の附従性(担保している債権がなくなれば、担保それ自体も存在する意味がなくなるため、担保権もなくなるという性質)により、抵当権も消滅します。このことは、債務者及び抵当権設定者(自分の借金のために自分の不動産に抵当権をつけた者と、他人の借金のために自分の不動産に抵当権をつけてあげた者をまとめて、このように言います。後者を「物上保証人」といいます)との関係においても、また抵当不動産の第三取得者や後順位担保権者との関係においても同じです。
これに対し、被担保債権とは別に抵当権のみが時効消滅するかについては、注意が必要です。つまり、抵当権が設定されている不動産を買った者(抵当不動産の第三取得者)や後順位担保権者との関係においては、抵当権のみでも時効消滅します。しかし、債務者及び抵当権設定者(物上保証人)との関係においては、被担保債権とは別に抵当権のみが時効消滅することはありません。これは、債務を弁済しない債務者や、他人のために自分の意思で物上保証人となった者は、被担保債権が消滅しない限り、自分で弁済の責任を全うしないでおきながら、債権者の債権回収の担保となっている抵当権の時効消滅を主張することは許されない、という価値判断からです。

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Q11 契約を申し込んだ者が、その申込が相手方に到達する前に死亡した場合でも、申込の効力は生じるのですか。相手方が承諾すれば、契約は成立するのですか。
A

申込発信後到達前に申込者が死亡もしくは能力を喪失したとしても、原則として申込の効力は失われません。ですから、申込が相手方に到達すれば、申込は有効になされたことになります。
しかし例外として、(1)申込発信後到達前に申込者が死亡もしくは能力を喪失したことについて相手方が悪意の場合(知っていた場合)、または(2)申込者が申込に際して、原則の場合と異なる意思表示をしていた場合(「この申込が到達する前に、私が死亡し若しくは能力を喪失した場合には、たとえ相手方がその事実を知らなくても、申込の効力は生じないものとします」と言っていた場合)には、申込が相手方に到達したとしても、申込の効力は生じません。
このような例外の場合には、たとえ申込が効力を生じないものとしても誰にも損害を与えませんし、申込者(申込者が死亡した場合には、その相続人)の保護にもなるからです。
申込の効力が生じない場合には、相手方が承諾したとしても、契約は成立しません。

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Q12 買った家が、引渡を受ける前に、隣家からの延焼で燃えてしまった場合、建物の引渡を受けることができなくなったにもかかわらず、買主は代金を支払わなければならないのですか。
A

買主は、この場合にも代金を支払わなければなりません。土地・建物の売買においては、危険負担の債権者主義が採られているからです。
危険負担とは、双務契約(売買契約など)を締結した後、目的物(土地・建物その他の特定物)の引渡前に、その目的物が売主・買主双方の責任によらずに滅失・毀損(焼失等)した場合、買主は目的物を手に入れることができなくなったにもかかわらず、代金を支払わなければならないのかという問題です。
滅失・毀損した契約目的物の引渡し債務を基準にして、その引渡しについての債務者(売主)が代金を受け取ることができなくなる場合を「債務者主義」、反対にその引渡しについての債権者(買主)が代金を支払わなければならなくなる場合を「債権者主義」といいます。
民法の原則は債務者主義です。しかし例外として、(1)土地・建物のように、その物の個性に着目して取り引きされる物(特定物)の取引(物権の設定・移転)の場合、(2)当事者間に債権者主義による旨の特約がある場合、(3)停止条件付き双務契約における目的物の毀損の場合においては、債権者主義が採られています。
特定物の取引がなされた場合、たとえ取引後引渡前にその物の市場価格が上昇したとしても売主は買主に対し、「値上がりしたのだから、値上がり後の代金を支払ってくれなければ、物は引き渡しません」と主張することはできません。このこととのバランスから、取引後引渡前にその物の市場価格が下落したとしても、買主は売主に対し、「値下がりしたのだから、値下がり後の代金を支払うので、物を引き渡してください」と主張することもできません。この価格の下落の最たる場合が、目的物の滅失によって価格がゼロになった場合です。
このように「利益の存するところに危険もまた帰属する」と考えるのが、債権者主義なのです。
もっとも、これは、合理的な根拠といえないとする批判も強くなされています。そこで、解釈として、なるべく債権者主義が適用される場合を狭めていこうとされています。
しかし、宅建の試験としては、特定物の場合は債権者主義であるとおさえておいてください。

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Q13 連帯債務者の一人が債権者に債務の全額を支払った場合に、他の連帯債務者に求償できるのはなぜですか。
A

連帯債務において、各連帯債務者は債権者に対しては全額を弁済する責任を負っています。負担部分とは、連帯債務者となった各人が最終的に支払わなければならない金額を、債務に対する割合の形であらわしたものです。
たとえば債権者甲に対して1,000万円の連帯債務を負っているAB(負担部分は平等)のうち、Aが甲に対して800万円を弁済した場合、Aは他の連帯債務者Bに対して、Bの負担部分の限度で求償することができます。すなわち、AはBに対して、「私が支払った金額は、そもそもBさんも支払うべき義務がある債務の一部を履行したものです。だから、私と同じ1/2の負担部分を負っているBさんは、私が支払った額の半分に当たる400万円を私に返してください」と言うことができます。これが「求償する」ということです。
AがBから400万円の求償を受けたならば、結果として、AもBも400万円ずつを負担して債権者甲に対して負っていた債務1,000万円のうち800万円を弁済したことになります。そして残りの200万円については、依然としてAもBも連帯債務を負っており、AとBの間では1/2ずつという平等の負担部分で最終的な弁済をする義務を負うのです。

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Q14 受働債権に同時履行の抗弁権がついていても相殺ができるのに、自働債権に同時履行の抗弁権がついていたら相殺ができないのは、なぜですか。
A

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができます。この権利を「同時履行の抗弁権」といいます。これは、建物の売買(双務契約)において、特に「代金先払い」とか「代金後払い」とかの約束をしていない限り、買主は「物と引き替えでなければ代金は支払いません」と主張することで、金だけ取られて物が引き渡されないという事態を回避することができます。売主も「代金と引き替えでなければ物は引き渡しません」と主張することで、物だけ取られて代金を踏み倒されるという事態を回避することができます。このように、同時履行の抗弁権は、双務契約における当事者間の公平を図り、不必要な争いを未然に防ぐと同時に、自らの債務の履行を拒絶することで相手の債務の履行を担保しているのです。
相殺とは、たとえばAとBがお互いに相手方に対して100万円の貸金債権を持っている場合に、100万円という対等な額の範囲で債権債務を消滅させることをいいます。もしもこれが認められなければ、万が一Aがその後で無一文になってしまったなら、Bは、Aから100万円の返済を受けることができないにも関わらず、Aに対して100万円の返済をしなければならないという、不合理な事態が生じてしまいます。このような事態を避けるための債権担保という意味と、迅速かつ簡易な決済を行う手段としての意義を、相殺は持っているのです。
ところで、自働債権とは「相殺をしようとする者が持っている債権」を、受働債権とは「相殺される者が持っている債権」をいいます。同一の債権でも、当事者のどちらが相殺をするかで、その債権は自働債権となったり、受働債権となったりするのです。
同時履行の抗弁権がついている受働債権について相殺を認めても、その抗弁権を有している者が自ら、その抗弁権を行使せずに相殺をするというのですから、格別に問題はありません。しかし、自働債権に同時履行の抗弁権がついているにもかかわらず相殺することを認めるならば、相殺される相手方が同時履行の抗弁権を行使することを相殺する者の意思で一方的に否定することになってしまいます。そこで、このように自働債権に同時履行の抗弁権をついている場合には、相殺は認められないのです。

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Q15 法定相続分と遺留分とは、どう違うのですか。
A

相続分とは、被相続人(死亡した者)の有していた相続財産(遺産)のうち、どれぐらいの割合で各相続人(各遺族)が相続できるのかを示したものです。被相続人が遺言で、各相続人の相続分を指定した場合を「指定相続分」、指定がないため法律の規定で自動的に相続分が決まる場合を「法定相続分」といいます。
配偶者と子が相続人である場合、その法定相続分は各1/2です。配偶者と被相続人の直系尊属(親)が相続人である場合、その法定相続分は配偶者2/3、直系尊属1/3です。配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合、その法定相続分は配偶者3/4、兄弟姉妹1/4です。

これに対して遺留分とは、一定の相続人のために法律上必ず留保(保証)されなければならない、遺産の一定割合のことをいいます。一方で被相続人は、その有する財産を誰にどれだけ贈与・遺贈するかの自由を有します。しかし他方で、相続人は相続分について期待するのが通常であり、相続財産による生活を保証しなければなりません。そこで、一定の相続人(兄弟姉妹以外の相続人)に一定割合での相続分を留保するのが、遺留分の制度です。遺留分の限度額よりも少ない額しか相続できなかった相続人は、自己の遺留分の範囲を守るために、現実に相続した額と遺留分との差額を、被相続人から贈与・遺贈された者に対して、返還するよう請求することができます(遺留分減殺請求)。 遺留分を有している者は、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人であることには注意が必要です。
被相続人の直系尊属のみが相続人である場合の遺留分は、相続財産の1/3に直系尊属の相続分を掛けた割合です。それ以外の場合の遺留分は、相続財産の1/2に被相続人の相続分を掛けた割合です。

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